西吾妻山(にしあづまやま)の厳冬期登山について、時系列で振り返りながらまとめます。
結果として今回は山頂に届かず途中撤退となりましたが、初めての厳冬期ソロ登山として多くの学びがありました。
西吾妻山とは?
西吾妻山は福島県にある日本百名山のひとつです。
夏であれば、
- ロープウェイで標高を一気に上げられる
- 往復1〜2時間程度
と、初心者でも登れる山として知られています。
冬山でも比較的難易度は低めとされているため、今回は厳冬期のトレーニング目的で挑戦しました。
なお、
- 厳冬期ソロ登山としては今回が初
- それ以前は講習で谷川岳にグループで入山
という経験レベルでした。
当初の計画と、最初の想定外
今回の計画では、ロープウェイを使わずに下から登る予定でした。
理由はシンプルで、
ロープウェイを使うと、すぐ終わってしまいそう
夏道では下から登ると6〜7時間。
冬ならちょうどいい運動量になると考えていました。
しかし、ここで大きな誤算。
スキー場のコースを通る必要があり、
登山者はロープウェイ利用が必須とのこと。
事実上、
「それが嫌なら登れません」
という状況だったため、計画を変更しロープウェイを利用しました。
料金は往復4,000〜5,000円ほど。
結果的に、これが体力的には正解だったと後で痛感することになります。
入山直後の状況
ロープウェイ山頂駅では、山慣れした雰囲気のグループが準備をしていました。
「2人先に行っているから気をつけて」
と声をかけてもらい、天候はやや不安定でしたが出発。
先行者の**トレース(足跡)**があったため、
- 最初はアイゼン装着
- 比較的順調に進行
ここまでは、かなりいい流れでした。
1つ目の大きなミス:ワカン未携行
しかし、この時点で重大な判断ミスをしていました。
ワカン(スノーシュー)を持っていかなかったことです。
- 車には積んでいた
- しかしロープウェイ乗車時に
「まあ大丈夫だろう」と置いてきてしまった
結果として、この判断が後半の大きな苦戦につながります。
想像以上の深雪とラッセル
歩き始めて10分ほどで先行者に追いつきましたが、状況は予想以上でした。
先頭の登山者が猛烈にラッセルしているものの、
- 後ろでも膝〜腰まで埋まる深雪
- かなりの重労働
この時点で、
下から登らなくて本当に良かった
と思うほどの積雪量でした。
しばらくすると先頭の男性が、
「怖くなったので撤退します」
と言って引き返しました。
体力には余裕があったため、残った女性と交代し、自分が先頭でラッセルすることになりました。
中間地点までは順調
先頭で進みながら距離を稼ぎ、山頂までの中間地点にある平地へ到達。
このあたりは雪が締まっていて歩きやすく、
これは山頂まで行けるかも
と、かなり前向きな感覚でした。
しかし、この後、状況は一気に悪化します。
天候悪化とホワイトアウト
平地を進んでいるうちに、
- 風が強まる
- 気温低下
- 視界が真っ白
ホワイトアウト状態になりました。
さらに、
- 平地終了後は急登
- 再び腰まで埋まる深雪
- ラッセルが進まない
体力消耗が激しく、コンディションは悪化する一方でした。
タイムリミットとの戦い
もうひとつの問題は、ロープウェイ最終が15時という点。
この時点で既に12時を過ぎており、
- 13時には折り返しが必要
- しかし距離が全く進まない
12時半になっても状況は改善せず、
これ以上進むのは危険
と判断し、撤退を決断しました。
判断としては正解だった
結果として、このタイミングでの撤退は正解でした。
というのも、下山時にはすでに、
- トレースが消えかかっている
- 見失う箇所が多い
状況がかなり悪化していたからです。
そしてここから、今回の山行で最も厳しい局面に入っていきます。
トレース消失、ルートファイディングの連続
下山を開始した時点で、状況はすでにかなり厳しくなっていました。
行きに頼っていたトレース(足跡)は、
- ほとんど消えかけている
- 残っていても断続的
何度もルートを見失い、その都度ルートファイディングをやり直す必要がありました。
特に厳しかったのは平坦地です。
- 目印がない
- 地形の特徴も少ない
- 視界も悪い
気づけば、
- 本来は南へ進むべきところを西へ進んでいた
- 同じ場所をぐるぐる回っていた
という状況に陥っていました。
ホワイトアウト下の平地は、想像以上に方向感覚を失います。
スマートフォンの電源落ち
さらに危険だったのが、スマートフォンのトラブルです。
現在地確認のために頻繁に取り出していたところ、
- 寒さで本体が冷え切る
- バッテリーが落ちる
という事態に。
つまり、
道に迷った状態で、地図と連絡手段を同時に失ったことになります。
幸い、
- ポケットに入れて体温で温める
- 再起動に成功
しましたが、かなり危険な状況でした。
加えて、
コンパスを持ってきていなかった
という準備不足も、大きな反省点です。
ルート逸脱と深雪ラッセル地獄
ルートを外れた影響で、下に行くほど雪が深くなっていきました。
場所によっては、
- 胸〜首まで埋まる
- 雪の中を泳ぐような状態
ほぼ全行程がラッセル。
体力を削られながら、ボコボコにされつつ、なんとかロープウェイ乗り場へ辿り着きました。
さらにトラブル:スマホ紛失
安心したのも束の間、ロープウェイ山頂駅で気づきます。
スマートフォンがない。
原因は、
- 腹巻きポケットに収納
- 隙間から落下
というもの。
結果として、スマホは山頂駅に落ちており、スタッフの方が保管してくれていました。
もしこれが、
- 深雪の中
- ラッセル中のどこか
で落としていたら、発見は不可能だったと思います。
これも大きな反省点でした。
GPSログで見えた事実
帰宅後にGPSログを確認すると、
- ショートカットできる場所で大きく遠回り
- 迷走している箇所が複数
判断ミスの積み重ねが、行動効率を大きく下げていたことが分かりました。
今回の主な反省点
今回の敗退は、単発のトラブルではなく、複数のミスの積み重ねでした。
装備面
- ワカン未携行
- コンパス忘れ
- スマホの耐寒対策不足
- 落下防止対策なし
判断面
- 「まあ大丈夫だろう」という装備判断
- トレース依存
- 時間的余裕の少ない計画
これらが重なった結果、遭難一歩手前の状況になりました。
敗退=失敗ではない
今回は山頂には届きませんでした。
しかし、
- 状況判断して撤退できた
- 危険な条件の中でルートを探し続けた
- 実戦レベルの判断経験が積めた
という意味では、非常に大きな経験になりました。
何より、
- 常に頭を使う
- 状況が変化し続ける
- 緊張感のある環境
このハラハラする感覚も含めて、山行としての充実感は非常に高いものでした。
まとめ
今回の西吾妻山の厳冬期ソロは、
- 装備判断の甘さ
- 準備不足
- 条件悪化
が重なり、途中撤退という結果になりました。
しかし同時に、
冬山では「小さな判断の積み重ね」が結果を左右する
ということを、身をもって学ぶ山行になりました。
敗退は、経験値です。
次は、この学びを装備と判断に反映させていこうと思います。