先日、『チェンソーマン』の映画を観てきた。かなり良かったので、感想をまとめておく。
正直、これまでアニメ映画に対して「めちゃくちゃ面白い」と思った経験はあまりなかった。例外は『THE FIRST SLAM DUNK』くらいで、あれは長年の作品を改めて本気で作り直した特別なケースという印象だった。
一方で、現在も連載中の作品の映画版というと、どうしても「ファン向けの一本」「いつもの映画版」というイメージがあった。例えば、原作の延長線上でキャラクターの見せ場を用意し、予定調和的にまとめるような作り。子どもの頃に観ていた作品には、そういう印象が強い。
だから今回の『チェンソーマン』も、「どんなものかな」という半信半疑の気持ちで観に行った。
結果、最初から最後までまったく飽きず、ずっと面白かった。
藤本タツキ作品の魅力は「裏切りの角度」
もともと『チェンソーマン』はかなり好きな漫画だ。
この作品の面白さは、単なるどんでん返しではなく、「そう来るのか」という裏切りの角度の豊富さにあると思う。
- 予想を裏切る
- その裏切り方もさらに裏切る
- しかもそのパターンが毎回違う
だから「このパターンね」とならない。常に新鮮で、読者や観客を飽きさせない。
どこかの作品で良い映画を撮るために映画をただひたすら見ている描写があったが、そこから推測するに藤本タツキ先生は相当な量の映画や物語作品をインプットしているんだろうな、ということ。大量の物語構造を体に入れているからこそ、あの発想の幅が出るのではないかと感じた。
前半:青春恋愛としての魅力
今回の映画で印象的だったのは、恋愛要素の描き方のうまさ。
レゼというキャラクターは、いわゆる「男心をくすぐる」絶妙なバランスで描かれている。
- ぶりっ子すぎない
- でも魅力的
- どこか儚さや距離感がある
前半は、普通の若者の恋愛のような空気感があり、少し青春を思い出すような、ほっこりした感覚で観ていた。
「こういう関係性、いいよな」と思わせる力がある。
後半:感情の反転とドーパミンの連続
そこから後半、一気に物語の空気が変わる。
レゼの正体が明らかになり、バトル展開へ。
恋愛感情から対立へと、感情移入の方向が反転する。
ここからは、
- 高密度のアクション
- 爆発的な戦闘演出
- 視覚的・感情的な刺激の連続
恋愛の余韻と、激しい戦闘のコントラストによって、観ている側の没入感がどんどん高まっていく。
前半は感情で引き込み、後半は刺激で引き切る。
構成としてかなり強い。
また、終始、下着姿で戦っているのも、無意識のうちにドーパミンを出してしまう要素なのだと思う。
「映画として完結している」強さ
今回いちばん感じたのは、これが単なる「アニメの映画版」ではなく、一本の映画作品として成立しているという点。
昔のアニメ映画にありがちだった、
- 原作のパロディ的な展開
- キャラクターの見せ場の寄せ集め
- お約束の流れ
といった構造ではなく、
この映画単体で面白くするための構成がしっかり作られている。
原作との関連やファンサービスに頼るのではなく、映画の中で起承転結が完結している。
だから、作品としての満足度が高いのだと思う。
これは『SLAM DUNK』にも共通している、最近のアニメ映画の進化を感じる部分だった。
少し歪んだ恋愛が、逆にリアル
物語の中心にある恋愛も、いわゆる純愛ではない。
どこか歪で、危うくて、斜めな関係性。
でもだからこそ、印象に残る。
きれいな恋愛よりも、
「こういう関係、あり得るな」と思わせるリアリティがある。
改めて、こういうタイプの恋愛描写もいいものだと感じた。
まとめ
正直、そこまで期待していなかったが、結果として予想以上に満足度の高い映画だった。
- 裏切り続ける物語構造
- 感情を引き込む前半の恋愛
- 刺激で押し切る後半のアクション
- 一本の映画として完結した構成
『チェンソーマン』らしさと、映画作品としての完成度の両方がしっかり成立していた。
かなり面白かった。観てよかった一本。